起業から安定経営への順路 10年後にも生き残る施策を
起業して1年以上が経過した個人事業主や零細企業の社長たちから良く耳にするのが、「起業(開業)したものの予想していた売り上げを達成できていない」という言葉です。
事業計画を立て、いざ事業を始めてみたら売り上げが計画通りに達成できていないとなると、当初に用意した開業資金が底をつく可能性もあります。こうなると、意気揚々と開業した事業があえなく頓挫することにもなりかねません。
経済産業省の「中小企業白書」によると、起業から1年後に存続する企業または個人事業主の残存率は72%だとされています。この数字を読み解くと、起業した事業者のうち約3割が1年以内に廃業してしまうことを示しています。
さらには、3年後には約50%、5年後には約40%、10年後には約26%と、年数を経ても事業を継続できている割り合いは右肩下がりに減少することになります。
しかし、逆に言えば、起業から10年を経過しても約26%の事業が継続されていることにもなります。
事業を安定的かつ長期的に継続できるのか、できないのか。想定外の事態を見越して、予め対策を練るのか、更に資金やリソースを投入するのか、何か施策を行うのか。
これらの判断が、その後に事業を「継続できるのか」または「継続できないのか」の重要なポイント、つまりここが事業の継続可否の分岐点になるわけです。
顧客数が自社の命運を握る 懸念材料に気付けるか否か
起業や創業を決意した動機は様々でしょうが、いずれにせよ、商品、商材、時間、空間を提供して相手から対価を得ることで事業は成り立っています。
いわゆる「B to B」または「B to C」というワードで表されるように、自身の事業によって対価を得る相手(=顧客)が「企業」なのか、それとも「個人(消費者)」なのか、の違いだけです。
もしも現在、顧客数が少ない状態で事業を運営しているのだとしたら、そこに懸念材料があることに気付いているでしょうか?
例えば、顧客が企業の場合、その企業の経営方針が変わったり、経営規模を縮小せざるを得ない状況に陥ったり、不幸にも経営破綻をしてしまったら、自社の売り上げの減少に直結します。それによって連鎖的に破綻してしまう可能性も少なくありません。
次に、顧客が個人(消費者)の場合を考えてみましょう。
現在のように短期で払拭できないような大きな社会不安があって、生活スタイルの変容と更新が求められた結果、個人の消費動向が下がってしまうこともあり得ます。これも前述の「対企業」の場合と同じように、自社の売り上げを押し下げてしまう要因にもなりかねません。
どちらの場合でも、「顧客」または「顧客数」が自社の売り上げを左右します。いかに多くの顧客を持っているか否かが、自社の命運を分けることにもなります。
認知度向上が顧客数増加へ プロモーション活動は重要
経営者の中には、良い商品や商材、好まれるサービスを提供し続けてさえいれば、自ずと認知度は上がり、それに比例して売り上げも上がっていくはずだと思っている人が多いのではないでしょうか?
でも、それは大いなる勘違いかもしれません。
もちろん、顧客や個人に向けて、正しい商品や商材または正直なサービスを提供し続けるのは絶対に必要なことです。
ある商品があったとします。購入して使うことで、多くの人たちが快適さや便利さを感じることができる商品だったとします。でも、この商品の「良さ」を認知してもらえない限り、購入には至りません。
通常、多くの人たちに商品を知ってもらうまでには非常に長い時間を要します。何もしないまま、良い商品であることが世の中に浸透するまで待つのだとすれば、5年後、いや、1年後には自社の経営が苦しくなるのは自明の理です。
商品を例に取りましたが、商材やサービスに関しても同じです。多くの人たち、もちろん、多くの企業に「認知してもらうため」と「周知するため」のプロモーション活動は事業の存続と発展のための、大変重要な活動であることに間違いありません。
いかに良い商品や商材、優れたサービスを持っていたとしても、それを知っている人が少ないのだとしたら、非常にもったいないことだと思います。
終わりに
世の中の多くの人たちの快適で便利な生活の実現に寄与する素晴らしい商品や商材、これまでになかったサービスなどを広めたいからこそ起業した人も多いと思います。
人々の生活を豊かにしたい、QOL向上のために尽くしたい、という崇高で純粋な気持ちだけでは売り上げの増加は見込めません。
もっと多くの人たちに訴求し、周知してもらう努力、つまり、情報発信力も備えていなければならないと思います。
株式会社サン・オフィス/代表取締役 東宮恵美